人事評価制度を変更するにあたって注意点はありますか。
従業員に納得してもらうために、評価基準を客観的なものにすることや、評価基準の周知を図ること、そして必要に応じて経過措置を設けること等が大切です。
目次
人事評価制度の実態調査
Job総研がおこなった『2023年人事評価の実態調査』によれば、人事評価制度に不満を感じていると回答した人が回答者全体の75.2%もいます。
また、人事評価制度によってモチベーションが下がったと回答した人が78.7%もいます。理由の上位には、「成果と報酬がみあっていない」、「評価の基準が不透明」、「上司が自分をちゃんと見てくれていないと思った」という回答がならんでいます。
このように、人事評価制度によっては従業員に不満や不公平を感じさせてしまいます。従業員とトラブルにならないためには、どのような人事評価制度とすればよいか見ていきましょう。
人事評価制度の法的な取り扱い
人事評価制度の見直しをする際、最低限守らなければならないルールがあります。それが、就業規則や人事考課規定についての合理的変更ルール(労働契約法10条)です。
このルールは、就業規則や人事考課規定の変更について、①従業員に周知し、かつ、②合理的なものでなければならない、というルールです。
実際の対応時のポイント
このままでは抽象的ですので、特に問題となる②のルールについて、どのような変更であれば合理的だといえるのか、ポイントをお伝えします。
ポイント1 就業規則や人事考課規定を変更する必要性がある
たとえば、実際に人材流出が続いており、これを防ぐために年功序列型の制度を止めて成果主義型の人事評価制度にしなければ、会社が存続できないという状況の場合、必要性が認められるでしょう。
ポイント2 従業員が受ける不利益の程度が低い
たとえば、賃金の変更があるとしても、同業種における同年齢の賃金と比べても高い水準の賃金が支給される場合、不利益の程度が低いと認められる可能性があります。
ポイント3 賃金総額の減少がない
裁判例では、変更前の賃金と変更後の賃金とで減少がないことがチェックポイントの一つになっていることがあるので、この点にも気を配るべきでしょう。
ポイント4 代替措置や経過措置を設けている
代替措置については、たとえば、定年時期を早めた代わりに再雇用の特則を設けるなどというものがあります。
経過措置については、たとえば、変更後の就業規則や人事考課規定によると賃金が下がってしまう従業員について、2~3年以上の期間調整手当を支給すること等が考えられます。
ポイント5 従業員との交渉を丁寧に行っている
労働組合との交渉だけでなく、過半数代表者や少数組合との交渉など、同意や納得を得るための手続きが広く含まれます。
まとめ
広い意味で従業員とトラブルにならないようにするためには、従業員に対する丁寧な説明や公平への配慮が大切です。
もちろん他にも細かいポイントはあります。弁護士であれば、あなたの会社の状況に応じたアドバイスができますので、一度ご相談ください。
※この記事は、2024年9月11日に作成されました。