ポイントを発行する際に気を付けるべきことを教えてください。
その際、何か気を付けるべきことはありますか?
ポイント発行の落とし穴
ポイントサービスは、町のパン屋さんの様な身近なビジネスから大手のECサイトに至るまでB to Cビジネスで広く普及しており、私たちの生活に浸透しています。それと同時に、ときにはスタンプカードなどのカジュアルな形式で提供されていることから、これに関する規制が存在することを事業者の方がご存じないことがしばしばあります。
しかし、ポイント制度の内容によっては資金決済法の前払式支払手段に該当したり、景品表示法および消費者契約法が適用されたりするなど、注意が必要です。
前払式支払手段とは?
前払式支払手段とは、プリペイド式の決済手段を指し、最も身近で分かりやすい例でいうと、商品券、Suicaなどの交通系電子マネー等がこれに当たります。この前払式支払手段に該当すると、発行額の50%の供託義務が生じるなどの規制が適用されます。
この前払式支払手段は、資金決済法3条1項で定義が規定されていますが、一般的には以下の3つの要件があるとされています。
① 金額等の財産的価値が記載・記録されること(価値の保存)
② 金額・数量に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号であること(対価発行)
③ 対価の弁済等に使用されること(権利行使)
これらの要件を満たし、ポイントが前払式支払手段であると認められると、供託義務等、資金決済法上の規制が適用されますので、注意が必要です。
前払式支払手段とポイント
通常、ポイントは商品やサービスの購入等に付随して発行されるもので、ポイント自体に対価を支払って取得するものではないため、②(対価発行)の要件を満たさず、前払式支払手段に該当することはありません。
しかし、ポイントがおまけとして付与されるだけでなく、プリペイドカードとしての機能も統合し、お金を支払って発行を受けることもできるような仕組みになっていると、②(対価発行)の要件を充足してしまいます。
また、ポイントの付与率が異常に高く設定されており、商品等の購入に対して支払われる対価が、実質的にポイントの取得にも支払われているとみられるような場合も危険です。
景品表示法
商品等の購入に付随して発行されるポイントは、景品表示法上の「景品類」に該当し、その景品表示法上の規制が適用される可能性があります。
発行されるポイントが、ポイント発行者の会計に利用できる場合には「値引き」として規制の例外とされるのが一般的です。ただし、別の景品と交換できたり、第三者と共通利用できたりするような場合には、規制の例外とされる「値引き」に該当するか慎重な検討が必要です。したがって、ポイント制度を専門家に相談して作りこまない場合には、自社の商品等の購入に利用する用途以外の機能を付けない等の方法でリスクを排除することをお勧めします。
消費者契約法
ポイントの利用規約の内容次第では、消費者契約上問題となるケースがあります。例えば短すぎる有効期限や、ポイント発行者が一方的にポイントを剥奪でき、何の補償もしないとするような消費者に一方的に不利益となるような規約は無効とされる可能性があります。細かいルールを決める場合には詳細な検討が必要ですが、ポイントを自由に剥奪できるようなルールを設けることは避け、有効期限のみを設定する限りでは、あまり問題になることはないでしょう。
利用規約の必要性
ここまで挙げたポイント発行の際の落とし穴は、いずれもその制度の設計や、利用規約の内容を調整することによって回避が可能なものです。規制を回避しつつサービスの魅力を発揮できるよう、実務を踏まえた的確な利用規約を作成することが重要です。
※この記事は、2024年2月7日に作成されました。