定年後の再雇用は拒否できますか?
高年齢者雇用安定法による継続雇用制度の義務付け
高年齢者雇用安定法(正式名称「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」)は、65歳までの安定した雇用を確保するため、次のいずれかの措置を講じることを義務づけています(9条1項)。
- 定年の引上げ
- 継続雇用制度の導入(なお、平成24年改正により対象者限定制度が段階的に廃止され、原則として希望者全員が対象となった)
- 定年の定めの廃止
したがって、60歳の定年の定めがある場合であっても、65歳までの継続雇用制度が必要となります。
例外的に継続雇用による就労を拒否できる場合(行政解釈・判例)
継続雇用による就労を拒否できるかについて、行政解釈は、以下の場合に継続雇用しないことができることとしています。
心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。以下同じ。)に該当する場合には、継続雇用しないことができる。(中略)ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意する。
最高裁判例においても、(対象者限定制度廃止前の事案ですが)対象者の基準を満たす従業員において雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方、再雇用をすることなく雇用を終了したものとすることは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものといわざるを得ない旨の判断を示しています(津田電気計器事件・最高裁第一小法廷平成24年11月29日判決・労判1064号13頁)。
結論
理論的な整理としては、希望者全員が継続雇用制度の対象となる以上、「定年到達者には、雇用継続の合理的期待が認められることになり、(中略)使用者による就労拒否には解雇権濫用法理が類推適用されると解され、定年到達者は、他に解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。)がない限り、再雇用の申込みに対する承諾があったものとして、使用者による就労拒否に対し、労働契約上の地位確認請求及び賃金請求をすることができる」と考えられます¹。
以上のとおり、継続雇用制度における就労拒否には、従業員を解雇する場合と同様に、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が認められるものでなければなりません(労働契約法16条参照)。
※この記事は、2023年10月18日に作成されました。