採用内定に関するハラスメント対応にどう対応すべきか?
目次
はじめに
雇用に関するトラブルは採用時にも発生します。従来、日本では圧迫面接なるものが当たり前のようにあるとされており、企業の採用時にかなり問題のある質問や姿勢が散見されました。しかし、近年では情報化が一段と進み、人権意識の高まりもあって、そのような過去には事実上放置されていた問題も、無視できなくなっています。本事例はまさにその典型だといえそうです。
法的問題点
①「結婚後も働き続けるつもりか」 という質問について
①の質問は、昭和・平成の時代には当たり前のようにされていたかもしれません。しかし、男女雇用機会均等法には、「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と採用時の男女差別を禁止する規定があります。応募者に対して結婚の予定を質問することが直ちに同規定に違反するものではありませんが、行政はこのような質問を同法違反に繋がりやすい不適切な質問と整理しています。そのためこのような質問を執拗な態様で行った場合、違法なハラスメント行為と評価される可能性があります。
②「内定を出す代わりに他の企業での就職活動は全て辞退するように 」という発言について
②については、採用内定者に対する指示の当否が問題となります。この点、法律上、採用内定は始期付解約権留保付雇用契約と整理されているため、内定者との間でも雇用関係が認められます。そこで、②のような指示が当該雇用関係に照らして適切かを検討するに、就活者が複数企業から内定をもらってはならないというルールは存在せず、内定先からどの企業を選ぶかは個人の自由です。②の指示はそのような就活者の自由を企業側の都合のみで一方的に制限する行為であり、適切とは言い難いと考えます。そのため、このような指示を強行に繰り返したり、指示に従わなかったことで内定を取り消したりするような行為は、違法なパワーハラスメントと評価される可能性があります。
対応のポイント
採用面接において①②のような質問・指示がされることは、過去には当たり前のように行われていたせいもあり、特に悪気なく担当者が口走ってしまうことも往々にしてあります。しかし、今はそのような時代ではありません。そのため、企業側では、採用担当の職員に対して「何が許されて、何が許されないのか」、基本的なトレーニングを行うべきだと考えます。このようなトレーニングが十分に行われれば、本件のような問題は概ね予防できると考えます。また、万が一不適切な質問をしてしまった場合には、速やかに過ちを認めて素直に謝罪し、回答する必要がないことや対応する必要がないことを説明することで、トラブルが波及することを回避できると思われます。
まとめ
本QAでは採用面接時に悪気なくやってしまいそうな問題行動について簡単に対応しました。雇用問題は時代の流れとともに変遷していくものですので、的確にキャッチアップしていく姿勢が大切です。
※この記事は、2023年10月18日に作成されました。