セクハラの相談を受けた場合、どう対応すべきでしょうか?
行為者との接触を回避したい相談者の希望を受け止めつつ、異動による解決の可能性等も検討し、被害の内容に応じた適正な措置で、職場環境の改善を図りましょう。
職場におけるセクハラ(セクシュアルハラスメント)とは
職場におけるセクハラには、以下の類型があります。
・対価型セクハラ
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの
・環境型セクハラ
当該性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの
なお、いずれの類型についても、当該労働者の性的指向や性自認にかかわらず、同性に対するものも含まれます。そして、事業主には、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備するなど、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられています(男女雇用機会均等法11条1項)。
セクハラは、被害者の尊厳を傷つける重大な人権問題であることはもちろんのこと、会社にとっても、生産性の低下や企業イメージの毀損、賠償等の経済的負担が生じるリスクのある、重大な問題です。
セクハラの被害申告があったら
セクハラの被害申告があったら、まずはその被害の実態を正確に把握することが肝要です。
調査は、セクハラ相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会等、必要最低限の者で担当し、被害申告に関する情報が徒らに広まらないように配慮します。そして、まずは相談者および行為者から事実関係を確認し、両者の間で事実関係に関する主張に不一致がある等、事実の確認が十分にできないと認められる場合に、第三者からの聴取を検討しましょう。第三者からの聴取にあたっては、当事者のどちらか一方に肩入れする関係にないか等、職場での人間関係も考慮の上、公平な調査となるように注意する必要があります。
セクハラに相当する事実がないと判断された場合
調査の結果、セクハラに相当する事実がないと判断された場合、特に相談者への説明は慎重に行う必要があります。
相談があった以上、相談者は、行為者の言動に何らかの不快な思いを抱いています。事実調査の結果を丁寧に説明し、セクハラには相当しないものの不適切な言動が確認されている場合には、再発防止に向けた措置等についても丁寧に説明し、相談者の納得を得られるように努めましょう。
セクハラに該当する事実があると判断された場合
セクハラに相当する事実が確認できた場合には、速やかに、相談者および行為者に対して適正な措置を行う必要があります。
相談者と行為者の間の関係改善が期待できる場合には、まずはこれを援助することが望ましいです。しかしそうでない場合は、相談者と行為者を引き離すための措置を検討することになります。配置転換を実施する際は、相談者が希望する場合を除き、相談による不利益取扱いとならないよう、異動の対象は行為者とすべきです。
行為者の懲戒処分は、就業規則の定めに従って、適正に行う必要があります。特に懲戒解雇は、被懲戒者の不利益が大きく、無効等を主張した裁判等に発展する可能性もありますので、より慎重な検討が必要です。処分を決定する前に、顧問弁護士等の法専門家に相談し、処分の相当性について助言を得ることが望ましいです。
また、相談者のメンタルヘルス不調への対応も重要です。事業場内産業保健スタッフ等と連携し、相談者の心身の回復のために必要な援助をするようにしましょう。
まとめ
セクハラが発生してしまった後は、改めて、職場におけるセクハラに関する方針を周知・啓発し、再発防止に向けた研修等を実施しましょう。社内報や社内ホームページ等で、セクハラ行為者に対する厳正な対処を周知することも効果的です。
その他、職場におけるセクハラが問題となる具体的な場面や、それに対するあるべき対応策等については、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号。いわゆる「セクハラ指針」)が参考になりますので、内容をよく確認しておきましょう。
※この記事は、2024年1月5日に作成されました。