新規ビジネススキームのアイデアが適法か検討する際の観点がわかりません。
それぞれの実現可能性を検討しているのですが、「法律的に問題ないか」は、どういった観点から検討が必要でしょうか?
また、どのタイミングで弁護士に相談すべきでしょうか?
目次
リーガルチェックは何故必要なのか
新規事業のリーガルチェックとは、事業モデル自体が法律に違反していないか、作成された契約書に問題がないか等について専門家の確認を受けることです。
もし、リーガルチェックを受けずにビジネスを開始した場合には次のようなリスクを負うこととなります。
まず、事業自体を継続できないリスクがあります。具体的には、事業が法令に抵触する場合は、行政指導により、事業を停止・是正することが余儀なくされることがあります。また、違法な事業を行ったことに対して罰則が課されることもあります。
次に、顧客との法的紛争が生じるリスクがあります。具体的には、事業の停止により顧客にサービスを提供できなくなることや、リーガルチェックを受けていない契約書の不備が原因で、顧客から、契約の無効を主張されたり、損害賠償を請求されるなど予期せぬ契約トラブルが生じたりすることがあります。
最後に、法令に抵触する事業の実施や、サービス提供の中止等による会社の信用低下や投下資本を回収できないリスクがあります。
このようなリスクに対応するためにも、新規事業開始前にリーガルチェックを受けることが必要不可欠です。
具体的な法規制
具体的に以下の各事業分野では法規制に注意する必要があります。
ヘルスケア事業(美容品・化粧品・サプリ等の販売)
ヘルスケアのように人の生命・身体の健康に関する事業は、安全性確保の観点から厳格な法規制が存在します。具体的には、美容品・化粧品・サプリ等は、商品の含有成分によっては、薬機法の適用対象となることがあります。
仲介事業
仲介業の内容によって確認すべき法規制が多数あります。具体的には、不動産の場合は宅地建物取引業法、投資の場合は金融商品取引法、求人の場合は職業安定法を確認する必要があります。
資金決済事業
資金決済システムの安全性、健全性確保の観点から厳しい法規制が存在します。具体的には、資金決済法等を確認する必要があります。
食品販売事業
食品の安全確保の観点から法規制が存在します。具体的には、食品衛生法、食品表示法等を確認する必要があります。
新規事業のリーガルチェックの進め方
新規事業の分析
新規事業については網羅的にリーガルチェックをする必要があります。そのためには、まず、新規事業の全体像を把握する必要があります。
事業の全体像を把握した上で、法的リスクをリストアップし、リスクの程度・緊急性を評価することになります。
分析後の対応
リスクの評価後、各リスクに対する対応を検討することとなります。具体的に抽出されたリスクに対して、事前の調査をします。事前の調査では、法律・政令・省令・通達だけでなく、ガイドラインや法改正の経緯等も確認します。
その上で、対応すべき点ついて、関係省庁へ直接確認する場合があります。
制度活用
新規事業のリーガルチェックに活用できる制度が複数存在します。法的リスクを軽減するためにも以下の制度を活用することが重要です。
法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)
新規事業に係る具体的行為に関して、その行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうかをあらかじめその規定を所管する行政機関に確認する制度です。行政機関が回答を行い、その回答は公表されます。
グレーゾーン解消制度
産業競争力強化法に基づき、事業者が、現行の規制の適用範囲が不明確な場合に、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度です。
新事業特例制度
法律の規制に違反する新規事業について、事業者が規制の特例措置を提案し、安全性等の確保を条件として企業単位で規制の特例措置の適用を認める制度です。
規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)
新技術・新事業の実施が現行の規制との関係が問題となる場合に、期間等を限定し現行の規制の適用を受けることのない環境を作り上げた上で「実証」を行い、データを集めることで規制の見直しにつなげるという制度です。
まとめ
今回は、新規事業のリーガルチェックについて解説しました。新規事業は、多数の魅力が存在しますが、同時に新規事業が抱えるリスクについては適切に対応する必要があります。新規事業をスムーズに実施するためにも、事業開始前に専門家のリーガルチェックを受けることが必要不可欠です。
※この記事は、2024年4月9日に作成されました。