SLAの意義と留意点を教えてください。
前提としてSLAとは何か?
Service Level Agreementは、提供されるサービスの範囲・内容・前提事項を踏まえた上でサービス品質に対する利用者側の要求水準と提供者側の運営ルールについて明文化したものです。具体的には、稼働率、障害監視間隔、応答時間、サポート提供時間等についての数値目標などを定めます。
また、サービスレベル未達時の補償内容について定められる点がSLAの特徴です。これに対し、サービスレベルが努力目標として定められているにすぎず、未達時の補償責任が発生しないものはSLO(Service Level Objective)と呼ばれ、SLAと区別されます。
SLAに定める補償の効果
SLA未達時の補償は、民法上、損害賠償額の予定と推定されます(同法420条3項、1項)。損害賠償額の予定であることから、ユーザは実際に被った損害額が予定賠償額を上回っている場合でも、原則として予定賠償額の範囲でしか補償を受けられません。ただ、SLAの有無にかかわらず、多くのサービス提供事業者がSLAとは別に責任制限や免責の規定を契約書に定めている現状を踏まえますと、損害賠償額の予定のデメリットは過大視されるべきではないかもしれません。
一方、損害賠償額の予定のメリットとして、ユーザは損害の発生や因果関係について主張立証する必要がなく、SLA未達の事実を主張立証すれば予定賠償額を受けられます。SLAがなければ、サービスレベルが曖昧・不明確となり、債務不履行を立証することも煩雑となるため、ユーザ視点ではSLAが定められているサービスが望ましいといえるでしょう。
ユーザとしては、上記のようなSLAの補償の効果を理解するとともに、損害の発生を未然に防ぐために冗長性を確保するシステム・運用体制を整えることも重要と考えます。
※本稿は、2024年2月7日に作成されました。