SNSの運用代行を業者に委託する際の注意点を教えてください。
SNS運用代行に関する契約において定めるべき事項
SNS運用代行に関する契約においては、一般的な業務委託契約書に定める事項に加えて、以下に関する事項について最低限定めましょう。
- 運用対象となるSNSの媒体
- SNSのアカウント名
- SNSアカウントのID/PASSWORD等の管理方法
- 投稿するコンテンツの制作から投稿に至るまでのフロー及びスケジュール
- 投稿するコンテンツが第三者の権利を侵害していないことや法令に違反していないことの表明保証
- 投稿するコンテンツについて第三者から権利侵害の主張を受けた場合や炎上した場合の対応方法
投稿するコンテンツの制作を委託する場合のポイント
適法性の確保
SNS運用代行を委託する場合、投稿するコンテンツの制作も委託内容に含むケースが多くみられます。投稿するコンテンツの制作を委託する場合、投稿するコンテンツに含まれるテキスト、画像、動画、音声、肖像等の素材の権利関係について適法な権利処理が確保される内容の契約にする必要があります。具体的には、素材の入手経路及び権利処理に関するエビデンスの提出を義務付けるこが重要です。
素材の入手経路及び権利処理に関するエビデンスとしては、例えば、有料の素材サイトから購入した場合には、その購入履歴や著作権に関する情報が記載されているページ情報が考えられます。また、再委託先に素材の制作を委託している場合には、再委託先からSNS運用代行業者または委託者に対する権利移転または適切な範囲での利用許諾の設定が確認できる契約書類が考えられます。
また、コンテンツ内に、芸能人・インフルエンサー・一般人の肖像が含まれる場合には、所属する芸能事務所や本人からの肖像利用に関する承諾書等を取得していることを確認する必要があります。なお、芸能人やインフルエンサーについては、委託者の競合事業者のPR等を実施していないかについても併せて調査しておくことが望ましいです。
上記のエビデンスの提供を義務づけていても、投稿するコンテンツに関する権利関係の適法な権利処理が漏れてしまうこともあります。そのため、第三者からの権利侵害の主張に備え、投稿するコンテンツに関して第三者の権利を侵害していないことや関係法令に違反していないことについての表明保証条項を定め、権利処理に漏れがあった場合に責任追及が出来る状況にしておきましょう。
適切性の確保
2.1に記載した契約内容によってコンテンツの適法性を確保した場合であっても、コンテンツが世間から嫌悪感を持たれるものであるときには、炎上してしまうリスクがあります。炎上する原因は多岐にわたり、コンテンツを投稿する前に明確に予測することが難しいため、契約内容に炎上を防止するための措置を明確に記載することは難しいのが実情です。とはいえ、第三者のことを攻撃したり煽ったりするコンテンツの様に炎上リスクが相当程度予測できるものもあります。したがって、炎上するリスクのあるコンテンツを基本的には制作しないこと、炎上する可能性を認識した場合にはその旨を委託者に報告する義務を契約内容に定めると良いです。
まとめ
SNSは企業のPRにおいてポジティブにもネガティブにも大きなインパクトを与えるものです。
SNSが炎上した場合、SNS運用代行業者に契約上の責任追及をしてもディスブランディングによって世間から失った信用を含めた損失を完全に補填することは難しいため、委託者側においてもコンテンツの適法性及び適切性を確認する体制を構築することが重要です。
※この記事は、2024年12月23日に作成されました。