社長にも労災は適用されますか。
ただし、今回のやけどの事故に遭う前に、社長さんが労災保険に「特別加入」する手続をしていた場合には、労災保険を使うことができます。もし未加入の場合には、今回の事故で労災保険を使うことはできませんが、今後に備え加入を検討しましょう。
社長の業務中の事故についての労災保険・健康保険利用の可否
今回の事故は社長の業務中に発生した事故です。しかし、労災保険の適用対象者は、事業主に使用されて賃金の支払を受けている労働者であることから、経営者である社長には基本的に適用されません。
また健康保険についても、被保険者が5人未満の適用事業所の社長であれば使える可能性があるものの、業務中の事故については基本的に使うことができません。
労災保険の特別加入制度
このように、社長は業務中の事故で負った傷害などについて、基本的に労災保険も健康保険も使えません。
しかしながら、それでは困ってしまう社長さんも大勢いらっしゃいます。
そこで、社長が業務中に事故にあった場合に労災保険による補償を受けられるようにするための、労災保険の「特別加入制度」という任意加入の制度が存在します。
社長が、業務中の事故に遭う前にこの特別加入の手続を行っていた場合には、社長も労働者と同様に、当該事故に起因する負傷等について、労災保険から補償給付を受けることができます。
労災が発生しやすい業種で、社長さんご自身も、従業員(労働者)と同様の業務に従事する機会が多い場合には、労災保険の特別加入制度の利用を検討した方がいでしょう。
労災保険に特別加入するための要件・手続
もっとも、会社の社長であれば誰でも労災保険に特別加入することができるわけではなく、加入できる要件等があります。
まず、労災保険に特別加入するには、以下に定める数の労働者を常時使用する会社の社長である必要があります。
- 金融業、保険業、不動産業、小売業:50人以下
- 卸売業、小売業:100人以下
- サービス業:300人以下
また、次の要件を満たしている必要もあります。
- 雇用する労働者について、労災保険の保険関係が成立していること
- 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること
手続としては、労働保険事務組合を通じて、所轄の労働基準監督署を経由して、労働局長宛てに特別加入申請書を提出する必要があります。
制度・加入手続の詳細について知りたい場合には、ひとまず、所轄の労働基準監督署にお問い合わせされるとよいでしょう。
まとめ
このように、会社の社長については、労災保険に特別加入していない限り労災保険の適用はありません。しかし、労働者数の多くない会社の社長であれば、労災保険に特別加入しておくことで、業務中の事故によって社長に発生した損害を填補することができます。
また、労災保険の特別加入とは別に、経営者の各種リスクをカバーするような民間の保険商品もあります。
企業規模・業種・社長自身が普段従事する業務内容などの諸事情を踏まえて、適切な制度ないしは保険商品の利用を決定し、社長ご自身のリスクや会社経営のリスクに備えるとよいでしょう。
- 労災保険の特別加入についての詳細は、次のウェブサイトをご参照ください。
- 厚生労働省ウェブサイト「労災保険への特別加入」
※この記事は、2024年1月26日に作成されました。