投資家から社外取締役の派遣を受ける際の注意点を教えてください。
社外取締役を設置したら今までと何が変わるのですか?また派遣を受ける場合の注意点もあれば教えてください。
目次
社外取締役とは
社外取締役の意義
取締役は株式会社において業務を執行し(会社法348条、363条)、業務執行に関する意思決定をする重要な役割を担います。取締役は、当該会社において従前業務を担ってきた者が昇格して就任するのが一般的ですが、社外取締役は文字通り社外から招聘する取締役です。
社外取締役の要件および社外取締役に期待される役割から見た適任者
社外取締役は、当該会社などと利害関係がない者である必要があり、就任できる要件が法定されています(会社法2条15号)。
また社外取締役には、以下の役割・責務が期待されています。
コーポレートガバナンス・コード【原則4-7】
① 経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
② 経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
③ 会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
④ 経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること
したがって、社外取締役を選任する際にはこのような役割を担うことができる者、たとえば、会社経営の経験者や弁護士・公認会計士などの有資格者など、その資質も重要となります。
社外取締役の選任
社外取締役の選任方法
取締役(社外取締役を含みます。)は、株主総会の普通決議で選任されます(会社法329条1項、同309条1項)。
投資家による社外取締役の選任
株式会社において、株主総会の目的事項である議題(例:「取締役○名選任の件」)、議案(例:「取締役○○氏選任の件」)は取締役会で議論のうえ、決議されます(会社法298条1項2号)。
投資家(株主)から社外取締役の派遣を要請された場合は、その候補者が法律上の要件を満たすことはもちろんのこと、社外取締役に期待する役割、責務などを踏まえて、会社にとって有益かどうかを議論して決定する必要があります。投資家が経営に関与することで所有と経営の分離が図れなくなり、過度に株主の利益を重視するなど経営方針に悪影響が生じる可能性もあるため、社外取締役派遣の目的については当該投資家に確認し、社内で慎重に検討すべきです。
なお、株主は株主総会の議題を提案することができ、具体的な役員の選任議案を提出することができます。そのため、株主から社外取締役派遣の打診があった場合は、その可能性も踏まえて検討することが必要です。
まとめ
社外取締役は、第三者としての中立的な立場で会社の経営に関与する点で、会社の経営にプラスになることが期待されますが、その役割や責務を果たせる者が就任することが重要です。投資家からの打診の際は候補者の資質のほか、就任の目的なども注意する必要があります。
※この記事は、2024年2月2日に作成されました。