株主総会を省略して書面決議にしたいのですが、どんな手続きが必要ですか?
はじめに ~株主総会の書面決議とは~
株主総会の書面決議とは、取締役や株主が提案した議題に対して、株主全員が書面またはメール等の電磁的記録(以下、「書面等」と言います。)で同意すれば、株主総会で決議を得たものとみなす制度で、「株主総会のみなし決議」とも呼ばれます(会社法上は「株主総会の決議の省略」と言います。)。
一口に「株式会社」と言っても、その規模やあり方は様々であり、株主総会に対して会社として何を求めるかも、会社によって異なります。株主総会の書面決議は、後述するように株主全員の同意を得なければならない方法です。そのため、株主の人数が多い会社には向きません。しかし、コロナ禍等で対面での株主総会の開催が難しい場合などにも定款変更等の必要なく利用できる有用な方法です。
株主総会書面決議の方法
通常の株主総会では、招集・開催・決議という段取りを踏む必要がありますが、書面決議の場合には総会の開催自体を行いませんので、招集と開催の手続きが不要となります。
まず、書面決議を行う場合には、取締役または株主からの議題の提案が必要です(会社法319条1項)。提案については、書面で行うことは法律上要求されていませんが、実際の運用では、同意書面も添えて通知することになるので、提案書も書面等で送ることになるでしょう。
そして、株主全員が提案に対する同意の意思表示を書面等で行った場合、株主総会の書面決議があったものとみなされます。つまり、書面決議は、会社が株主全員から同意書面等を受領したときに成立することとなります。定時株主総会については、その目的事項すべてについての提案について同意の意思表示があったときに、株主総会が終結したものとみなされます(会社法319条5項)。
書面決議の場合でも、議事録の作成は必要です(会社法318条1項)。議事録の記載事項や保管方法等については、通常の株主総会と同じですので、書面決議だからと言って議事録の作成を忘れないようにしましょう。また、同意書面等についても、議事録とは別に、株主総会の日から10年間本店に備え置かなければならないこととなっていますので、注意が必要です(会社法319条2項)。
書面決議の注意点
書面決議には、株主全員の同意が必要です。従って、1人でも同意をしないまたは書面等の返送をなさない株主がいる場合には、書面で株主総会決議を行うことはできません。
また、同意の意思表示は書面等で行うこととされています。この書面に押印は要求されていません。しかし、確実な証拠を残すという意味では、押印や電子署名などの方法をとった方が良いでしょう。
まとめ
株主の人数が少ない会社では、必要に応じて書面決議で株主総会を行うことも1つの方法です。手続きに問題が生じないよう注意の上、利用されてみてください。
※この記事は、2024年3月6日に作成されました。