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貸付けをしたいのですが、担保のとり方を教えてください。

取引先であるA社に貸付けを行うことになりました。A社は土地と建物を所有しているので、それを担保に取りたいです。どのような方法・手続きをとればよいでしょうか?
土地や建物等の不動産に担保を設定する場合には、抵当権や根抵当権を設定することが一般的です。具体的な方法・手続としては、抵当権または根抵当権の設定契約を締結し、対抗要件である登記を具備します。なお、前提として、取引先への貸付けが貸金業法等に抵触しないかどうかの確認が必要です。また、適正な担保を設定しないまま貸付けを行うと会社に損害を与え、取締役としての善管注意義務違反に問われる可能性もありますので、適切な担保評価を踏まえて貸付けを行うことの可否を十分に検討することが必要です。
回答者
酒井 紀子 弁護士
ひらかわ国際法律事務所

担保権の種類と不動産上に設定する担保権

担保権は、他者に対して有する債権を一定の範囲で他の債権者に優先して回収するために認められている権利です。

日本の法律上、担保権にはいくつかの種類があります。例えば、民法が担保物権として定める「典型担保」には、抵当権根抵当権質権等がありますが、実務上、典型担保ではないものの実質的に担保として利用されてきた仮登記担保譲渡担保といった「非典型担保」もあります。

この様に担保には様々な種類がありますが、土地や建物等の不動産を担保に取る方法としては、抵当権や根抵当権を設定する方法が一般的です。なお、担保権によって担保され、一定の範囲で他の債権者に優先して回収することができる債権を「被担保債権」といいます。

抵当権と根抵当権の違い

それでは質問の場合に抵当権と根抵当権のいずれを設定すべきでしょうか。

抵当権は、特定の被担保債権を担保する担保物権であるのに対して、根抵当権は、「一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する」担保物権です(民法398条の2)。

この様な違いから、根抵当権を設定する場合には、根抵当権によって担保される被担保債権の合計額の上限である「極度額」を予め定める必要があります。

質問の場合に抵当権と根抵当権のどちらを設定すべきかについては、A社に対する貸付けが1回のみなのか、今後も同種の取引を行うのか等の事情によります。原則として、貸付けが1回のみである場合には、抵当権の設定を、同種の取引を反復継続する場合には、根抵当権の設定を検討するとよいでしょう。

抵当権と根抵当権の設定手続

それでは、具体的にどの様な手続で抵当権または根抵当権を設定すればよいのでしょうか。

抵当権も根抵当権も当事者の合意によって生じる約定担保物権です。そのため、まずは貴社と不動産の所有者であるA社との間で、抵当権設定契約または根抵当権設定契約の内容に合意したうえ、抵当権または根抵当権の設定契約を締結する必要があります。

また、抵当権や根抵当権を設定したことを第三者に対して対抗するためには、登記が必要とされます(民法177条)。そのため、抵当権設定契約または根抵当権設定契約に基づく、抵当権または根抵当権の設定と同時に、登記申請を行う必要があります。

なお、日本の法律では、土地と建物は、例え同じ場所に所在していたとしても別個の不動産として取り扱われます。そのため、A社の所有する土地と建物が同じ場所にある場合であっても、土地と建物のいずれかに抵当権または根抵当権を設定することもできます。しかし、担保価値を維持するためには、土地と建物の双方に抵当権または根抵当権を共同担保として設定する方が良い場合が多いと思われます。

留意事項1~登記および担保価値の把握~

上述の通り、抵当権や根抵当権の効力を第三者に対抗するためには登記が必要となりますが、同一の土地または建物に複数の担保物権を設定することができる点にご留意ください。つまり、貴社が抵当権または根抵当権を設定し、登記をする前に、A社が銀行や他の債権者に対して抵当権や根抵当権等を設定しており、かつ、既に登記されている場合には、貴社の抵当権または根抵当権は先順位の抵当権者/根抵当権者に劣後してしまい、折角担保を設定したのに債権を回収することができなくなってしまう可能性があります。

また、抵当権や根抵当権以外にも、貴社の抵当権または根抵当権に優先する権利もあり得ます。

したがって、貸付けを行う前に少なくとも土地や建物の登記簿や利用状況等を確認したうえ、貴社に優先する権利がないか確認して担保価値を正確に把握する必要があります。

なお、適切な担保をとらないで貸し付けを行った場合等には、会社に損害を与え、取締役としての善管注意義務違反の問題になり得ますので、事前に適切な担保を設定できるかどうかの確認をしましょう。

留意事項2~貸金業法~

貸金業法上、金銭の貸付けを業として行う場合には、原則として貸金業法に基づく登録が必要とされています。貸金業法上登録が必要とされているのに登録を行わないまま貸金業を行った場合には、10年以下の懲役若しくは3,000万円以下の罰金又はこれらの併科という重い罰則があります(貸金業法11条1項、同法47条2号)。

ただし、「物品の売買、運送、保管又は売買の媒介を業とする者がその取引に付随して行うもの」等、一定の類型の貸付けについては、貸金業法上登録が必要な貸金業から除外されています。そのため、貴社が物品の売買、運送、保管又は売買の媒介を業としており、取引先であるA社への貸付けがこれらの取引に付随して行われるものである場合など、例外的に貸金業法の定める貸金業に該当しない場合には、登録なく貸付けを行っても貸金業法に違反しません。

まずは、貴社が取引先であるA社に貸付けを行うことが貸金業法に抵触しないか等、遵法性を確認する必要があります。

この記事は、2023年12月29日に作成されました。

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