定期賃貸借契約をなんとか更新できないでしょうか?
定期建物賃貸借契約の期間満了時の法律関係
定期建物賃貸借契約は、借地借家法38条の所定の要件を満たすことで、契約の更新がない旨の条項の効力が認められ、期間満了により契約が終了する賃貸借契約です。
更新拒絶の通知がなければ契約が終了しない規定(借地借家法26条1項)や、更新拒絶の通知をしても正当事由がなければ契約が更新する規定(借地借家法28条)といった、法定更新の規定が適用されません。
定期建物賃貸借契約で契約期間が1年以上の場合は、期間満了の1年以上前から6か月前までの期間に、期間満了により賃貸借契約が終了する旨の通知をしなければ、契約を終了させることができません(借地借家法38条6項本文)。しかし、通知を怠った場合でも、期間の経過後に終了通知をすれば、通知日から6か月の経過で契約終了となります(同項但書)。そのため、有効な定期建物賃貸借契約であった場合は、退去要求を拒むことはできません。
書面契約の不備による更新の主張
定期建物賃貸借契約とされるためには、期間の定めと契約の更新がない旨の定めを置いて、これを書面(内容を記録した電磁的記録も書面とみなされます。)によって契約をしなければならないとされています(借地借家法38条1項・2項)。
裁判例では、更新がない旨の定めについて、契約書面上、契約の更新がない旨が一義的に明示されている必要があるとされています。
東京地判平成20年6月20日
契約書上、定期建物賃貸借契約との記載があっても、その条項の中に更新に関する条項が記載された事例で、契約の更新がない旨が一義的に明示されてないとして、定期建物賃貸借でないと判断した裁判例。
契約書が書面で作成されているか、契約の更新がない旨の定めが明確かを確認し、不備があれば、定期建物賃貸借契約でないとして法定更新の主張を検討しましょう。
事前説明の不備による更新の主張
また、定期建物賃貸借契約では、あらかじめ建物の賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、書面を交付して説明しなければなりません(借地借家法38条3項。なお、建物の賃借人の承諾を得た場合は、書面に代えて、政令で定めるところにより書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することも可能とされています。)。この説明をしなかった場合は、更新がない旨の定めは無効となり、法定更新の主張が可能となります(同条5項)。
今回は説明書面にサインしたとのことですので、書面の交付はあったと思われますが、交付に伴う事前説明があったかどうかを争うことになります。
書面の送付だけで口頭による説明がなかった事案(東京地判平成18年1月23日)では、更新がない旨の定めが無効と判断されています。
一方、書面の送付前に、電話を通じた口頭の説明を行っていた事案(東京地判平成23年2月8日)で、事前説明があったとする判断がなされています。
サインをされた書面を返すまでに、電話等を含め口頭説明を受けていない場合は、法定更新の主張が可能です。
※この記事は、2024年2月9日に作成されました。