店舗にテレビゲームを設置してお客様に遊んでもらうのに許可が必要ですか?
ゲームの提供で侵害される権利
著作物をスクリーンやTV画面等に映すことを上映といい、著作権者には著作物を不特定または特定多数の人に対して上映をする権利(上映権)が認められています(著作権法22条2項)。そのため、他人の著作物を不特定または特定多数の人に上映した場合、著作権者の上映権を侵害することになります。
飲食店においてゲームをお客さんに提供することは、不特定の人に対して著作物を上映することになるため、上映権の侵害にあたります。過去には、利用料金をとり、家庭用ゲーム機のゲームを提供する「ゲームバー」経営者らがこの上映権の侵害で逮捕された事例や、ホテルの客に無料でゲームを上映したとしてホテル経営者が逮捕された事例があります。
さらに、テレビゲームは「映画の著作物」にあたると考えられています。映画の著作物の著作権者は、有償か無償かを問わず、著作物の複製物を譲渡し、貸与する権利(頒布権)がありますが(著作権法26条)、店が購入したゲームソフトを貸与することが、この頒布権の侵害となるかどうかは見解が分かれています。
許諾(許可)の必要性について
非営利かつ、無料で、出演者に無報酬であれば著作権者の許諾(許可)なく著作物を上映することができます。非営利とは、直接的にも間接的にも利益を得ないことをいいます。飲食店の営業の一環としてゲームを提供することは、集客に結びつくため、営利目的と判断されます。
また、無料とは、お客さんから入場料や実費を含め一切料金をとらないことをいいます。ゲームの利用に代金を受け取っていなくても、飲食代をうける場合には、無料と判断されないことがあります。
したがって、飲食店において無料でお客さんにゲームを提供する場合でも、著作権者に許可をとる必要があります。
ゲームの提供に際して行うべきこと
営利目的でゲームをお客さんに提供するときには、ゲームソフトの権利者から許諾を得るようにしましょう。メーカーによりその対応は異なります。各企業のホームページにはQ&Aや問い合わせ窓口が設置されているため、それらを参照し、問い合わせをすると良いでしょう。
まとめ
ゲームバーに限らず、お客さんがゲームを遊ぶことのできる飲食店等は全国に多数存在します。たとえ無料であっても、飲食店等において許諾なく営利目的でゲームを提供することは著作権法違反にあたりえます。無断上映することのないよう、きちんと許諾を得るようにしましょう。
- 島並良・上野達弘・横山久芳著『著作権法入門[第3版]』有斐閣、2021年
- 中山信弘著『著作権法[第4版]』有斐閣、2023年
- 愛知靖之・前田健・金子敏哉・青木大也著『知的財産法[第2版]』有斐閣、2023
- 産経新聞『ゲームバー経営者ら逮捕、「著作権違反」閉店相次ぐ』2018年6月13日
- 任天堂Q&A
- CAPCONホームページ「よくあるご質問 著作物に関するQ&A」
- 最高裁判所第1小法廷平成14年4月25日判決(最高裁判所民事判例集第56巻4号808号、判例タイムズ1091号80頁)
- 東京地裁昭和59年9月28日判決(パックマン事件、判例時報1129号120頁、判例タイムズ534号246頁)
※この記事は、2024年2月19日に作成されました。