未収金がある取引先が破産した際の対応と、事前の対応策を教えてください。
破産の法的意味
まず、破産するということの法的意味を理解しておく必要あります。簡単にいえば、多額の債務を負っている者が、その債務の全額を直ちに支払える見通しが立たないため(破産原因)、裁判所の清算手続に乗せることを意味します。
裁判所は、清算手続を進めるために破産管財人を選任します。その破産管財人において、残った財産をお金に換え(換価)、集められたお金を破産手続に参加してきた各債権者に対し債権額に応じて配当することが予定されています。
破産手続への参加は、裁判所に対し所定の要領で債権届出をすることによって行います。配当原資になるような財産もない場合は、破産管財人が選任されたとしても、配当手続を経ないまま手続が終了してしまいます。
破産者に対する未収金の回収方法
破産法100条1項は、「破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができない。」と定めています。そのため、未収金のある取引先が破産した場合、その債権者としては、破産手続に参加するという形で権利行使(債権回収)をしなければなりません。逆に言えば、破産手続に参加することなく未収金を回収することはできないということになります。
通常は、支払ができなくなった債務者が弁護士に破産を依頼すると、その弁護士から各債権者に対し、破産を受任したことや手続に入るため権利行使を控えるよう求める内容の通知書が送られてきます。そして、裁判所の手続に乗せられて破産管財人が選任され、その管理下で財産の換価がなされ、各債権者に対し債権額に応じて平等に配当が行われることになります。
これを無視して抜け駆け的に権利行使することは許されません。抜け駆け的に権利行使をしてしまった場合は、各債権者間の公平を図るために破産管財人から回収金を取り戻されてしまう憂き目に遭い、改めて破産手続に参加しなければ、配当さえも受けることができなくなります。ここでいう抜け駆け的な権利行使は、何も破産管財人が選任された後に限った話ではありません。破産に入る前に取引先の支払いが滞るようになったなど、破産しかねない兆候があることを察知して抜け駆け的に権利行使をした場合も同じです。
いずれにしましても、取引先が破産した場合は、破産手続に参加して配当を受けるしかなく、文句を言ったところでどうすることもできません。
リスク対策
取引先が大口であったり得意先であったりした場合、その未収金を回収できなくなると、自社も連鎖的に倒産してしまうリスクがあります。そこで、ビジネスにおいては、取引先から事前に担保を提供してもらうとか、損害保険を掛けておくといった方法で貸倒れをカバーし、あるいは、取引先を多くしてリスクそのものを分散させることも重要になってくるでしょう。
※この記事は、2024年2月5日に作成されました。