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取締役の改選を長年行っていなかった場合の手続きを教えてください。

当社では、取締役の選任手続きを長年行っていませんでした。
この度、取締役の改選手続きをやろうということになったのですが、どのような手続きを行えばよいでしょうか?
長年の選任手続きの放置によって全取締役がその任期を満了している場合であっても、会社法上の手続きに従って株主総会を開催し、取締役を改選することが可能です。
回答者
津城 耕右 弁護士
スパークル法律事務所

はじめに

一人会社や一族経営会社においては、株主総会決議等の会社法上必要とされる手続きについて、特にこれを行わずとも実際の会社経営にあまり支障がない場合には、正式な手続きを行っていないことがあります。今回問題となっている取締役の選任手続きについても同様で、例えば100%株主が唯一の取締役を兼ねている、あるいは取締役が親族のみで交代もないような場合には、特に役員選任の正式な手続きを行わずとも会社内部で問題が生じることも少ないことから、役員選任に関する所定の手続きを行っていない例は比較的多くみられるのではないかと思います。

取締役の任期

取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終結のときまでとされています(会社法332条1項本文)。非公開会社の場合には、定款で定めることによって任期を10年まで伸長することが認められています(同条2項)。

任期が満了すると、取締役は退任することとなります。そのため、今回のご質問のように、長年選任手続きを行っていなかったという場合、すでに既存の全取締役が任期を満了し、退任している可能性があります。

取締役選任の方法

既存の取締役について任期が満了していた場合、会社としては取締役の選任手続きを行うことを検討することになります。では取締役の選任はどのように行うのでしょうか。

株主総会決議

取締役の選任は、株主総会の決議によって行うこととされています(会社法329条1項)。

決議は普通決議によって行われ、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数が賛成することによって取締役が選任されます(会社法309条1項。なお、決議の要件は定款で変更することができますが、役員の選任、解任の決議は定足数要件は3分の1までしか引き下げられないこととされています(会社法341条)。また会社法上は累積投票の方法も定められていますが、ここでは割愛します。)。このように、取締役の選任は、株主総会の決議によって行うこととなります。

招集手続き

株主総会を開催するに当たっては、会社法上定められた招集手続きを行う必要がありますが、株主全員の同意がある場合には招集手続きを経ずに株主総会を開催することができます(会社法300条)。長年取締役選任手続きを行っていなかった会社には、1人株主の会社や、株主の数が少ない会社が多いのではないかと思いますが、株主全員の同意を得られるのであればこのような方法によって招集手続きを省略して株主総会を開催することが考えられます。

このような方法によることができない場合、招集手続きは、取締役が会社法所定の事項を決定することによって行うこととなります(会社法298条1項。取締役会設置会社では取締役会の決議により(同条4項)、非取締役会設置会社で取締役が2人以上いるときは原則として取締役の過半数の決定により(会社法348条2項)行います(なお、一定の場合には株主が招集することもできますが、ここでは割愛します。)。

今回のご相談のように、長年取締役の選任を放置している場合には、すでに既存の取締役全員が任期を満了していることも考えられます。しかし、取締役が欠けた場合や法律もしくは定款で定めた員数を満たさなくなった場合には、任期満了または辞任により退任した取締役は、後任者が選任されるまで、なお取締役の権利義務を有することとされています(会社法346条1項。なお、代表取締役の欠員の場合も同様です(会社法351条)。)。これに基づいて権利義務が続行している取締役は、会社法上の手続きに沿って招集手続きを行うことができます。

さいごに

長年取締役の選任を行っていなかった会社においても、以上のような方法によって株主総会を開催し、取締役の改選を行うことが可能です。改選をご検討の方はご参考いただけると幸いです。

この記事は、2024年1月30日に作成されました。

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