通信販売での広告を出す際、特定商取引法上どのような点に気を付けるべきでしょうか。
通信販売の広告規制を受ける対象
特定商取引法上、通信販売の広告の定義は存在しませんが、広告とは広く一般の消費者を対象とする契約締結に向けた誘引手段であることから、商品の説明や販売条件等が記載されていれば、すべて通信販売の広告に該当するといえるでしょう。
媒体は問わず、インターネットのウェブサイト上でのバナー、電子メール等での表示も含まれます。
電子メールやバナー等の本文中では商品等の紹介を一切行わずにURLのみ表示している場合であっても、そのリンク先で通信販売の販売条件等の広告をしている場合は、その電子メールやバナー等はリンク先と一体のものとして通信販売の広告に該当します。同様に、消費者が商品等の申込までに複数の広告画面を遷移する場合、当該複数の広告画面が一体として一つの広告に該当します。
表示事項及び表示方法の義務付け
通信販売は離れたもの同士の取引であることから、特定商取引法では、通信販売を行う販売事業者又は役務提供事業者に対して、販売価格や代金支払時期等の一定事項の表示やその表示方法が義務付けられています(特定商取引法11条、特定商取引法施行規則23条、24条)。
ただし、消費者からの請求によって、当該記載事項を記載した書面(インターネット通信販売においては電子メールでも可能)を遅滞なく提供することを広告に表示し、かつ、実際に請求があった場合に遅滞なく提供できるような措置を講じている場合には、広告の表示事項を一部省略することができます(特定商取引法11条ただし書)。
なお、具体的な表示事項は特定商取引法ガイド「通信販売」、より詳細な説明は特定商取引法ガイド「通信販売広告について」、特定商取引法ガイド「通信販売広告Q&A」をご参照下さい。
広告の表示場所
電子メールやバナー、ECサイト等の本文中で商品等の紹介を行う場合、特に表示場所が限定されていない表示事項については、本文、リンク先のいずれに表示してもよいですが、リンク先が見つかりにくい場所に表示されている場合や、そのリンク箇所に何が記載されているのかがリンク元において不明瞭な場合等は、広告義務が満たされていないと解されることがあります。
誇大広告の禁止
一定の表示事項等について、著しく事実に相違する表示や実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示は禁止されています(特定商取引法12条、特定商取引法施行規則26条)。
また、主務大臣から表示内容の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められた場合に、提出に応じないと、当該広告は誇大広告とみなされるため(特定商取引法12条の2)、当該資料を保存すべきことに注意が必要です。
電子メール又はファクシミリによる広告の規制
電子メールやファクシミリによって広告を提供する場合は、一定の場合を除き、顧客の承諾を得ずに行うことは禁止されており、承諾の記録を一定期間保存する必要があります(特定商取引法12条の3、12条の4、12条の5)。
また、電子メールの場合は、チェックボックス等を用いるなどして、当該操作により承諾となることを容易に認識できる形で顧客の承諾を取得する必要があります(特定商取引法施行規則42条2項1号、2号)。
違反した場合の措置
上記の規制に違反した場合、必要な措置をとるべき指示(行政指導)や業務停止命令等の行政処分、それらの旨の公表(特定商取引法14条、15条、15条の2)、刑事罰が課せられる可能性があります(特定商取引法72条1項1号、2号、2項、同74条1項3号等)。
※この記事は、2024年7月8日に作成されました。