未回収の債権について消滅時効を完成させないための方法を知りたいです。
質問のケースでは、取引先の具体的な反応に応じて、裁判の提起などをすることになります。
目次
時効の完成猶予及び更新
質問の売買代金請求権は、権利を行使することができることを知った時から5年間行使せず、債務者が消滅時効を主張(援用)すると、請求できなくなります(民法166条1項1号、同145条)。
そこで、時効を完成させないためには、時効の完成猶予及び時効の更新をすることが必要です。
時効の完成猶予とは、時効の完成前に一定の事由が生じたときに、一定期間、時効完成が先延ばしされることをいいます。
時効の更新とは、今まで進行してきた時効期間がすべてリセットされて、時効が再びゼロから進行することをいいます。
どのような方法があるか
裁判上の請求等による時効完成猶予と、確定判決等による時効の更新
裁判を提起すると、裁判が終了するまで、時効の完成が猶予され、さらに、勝訴判決の確定などにより、権利が確定したときに、時効が更新されます(同147条1項1号、2項)。
もっとも、訴えの取り下げなど権利が確定しないで裁判が終了した場合、裁判が終了したときから6か月間、時効完成が猶予されるにすぎません(同147条1項)。
ほかに、支払督促、和解の申立て・調停の申立て、破産手続参加等といった手続を取ることにより時効の完成が猶予されます。
そして、権利が確定したときに時効が更新されますが、権利が確定せずに終了した場合は、時効の完成が猶予されるのみとなります。
強制執行等
権利の確定により時効が更新された後、新たな時効の進行を阻止すべく、強制執行等(強制執行及び担保権の実行としての競売など)を申立てると、申立てから手続が終了するまでの間、時効の完成が猶予されます(同148条1項2項)。
もっとも、申立ての取下げなどによって手続が終了した場合、その終了時から6か月間、時効の完成が猶予されるのみとなります(同1項)。
承認
債務者が義務の存在を認める(債務の承認)と、そのときから時効が更新されます(同152条)。
債務の承認のほかには、支払い猶予の申込み、利息の支払い(元本についての承認)、一部弁済(残額についての承認)などが、承認とみなすことができるとされます。
仮差押え、仮処分
権利の実現を保全するために仮差押え及び仮処分を行った場合、その手続が終了した時から6か月間は、時効の完成が猶予されます。
その後裁判を提起して権利が確定してはじめて時効が更新されます(同149条)。
催告
裁判外で内容証明郵便などにより請求すると、そのときから6か月間、時効の完成が猶予されます(同150条1項)が、時効の更新はされません。一度催告した後、再度催告しても、再度時効の完成は猶予されません(同2項)ので、その間に、裁判上の請求や承認など時効の更新をもたらす手続を取ることとなります。
協議を行う旨の合意
権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、合意があった時から1年(それより短い期間の合意があればその期間が終了するまで)または協議の拒絶の通知から6か月間は、時効の完成が猶予されます(民法151条1項)。
方法の検討
メールや電話、普通郵便などで何度も催促しても、法律上、時効完成を猶予及び時効を更新することはできません。
また、貴社が商品を引き渡した日は「権利を行使することができる時」にはあたらないとされていますので、時効の完成時期を遅らせることもできません。
そこで、裁判を提起する、支払督促をする、仮差押えをする等、貴社の行為のみにより、時効完成が猶予、時効が更新する方法を検討してください。
まとめ
時効の完成を阻止するためにどんな方法を取るべきかは、具体的な状況に応じてよく検討することが必要で、適切な選択のために弁護士に相談することも有用です。
※この記事は、2024年11月22日に作成されました。