他社のキャラクターが写り込んでしまいました。
写り込みと著作権法
風景写真を撮影した時に、他人の著作物(例えば本件のように有名なキャラクターグッズ)が写り込んでしまうことがあり得ます。このような場合に著作権侵害が成立しない要件を明らかにするために、著作権法30条の2は、権利制限規定として、付随対象著作物の利用に関する規定を置いています。
著作権侵害の有無を判断する基準
条文がかなり読みにくいため、本件に即して要件を検討してみます。まず、風景写真の中に写っているキャラクターグッズは、それを目的に撮影したものでなく、風景写真を撮影する際に、キャラクターグッズがたまたま写り込んでしまったというケースが前提となります。
風景写真に有名なキャラクターグッズが写り込んだ場合に、著作権侵害が否定されるか否かを検討するにあたっては、以下の諸要素を検討することになります。
①風景写真を撮影した際に、キャラクターグッズが写った写真を利用することにより利益を得る目的があったか否か
②風景写真からキャラクターグッズを分離することが困難であったか否か
③風景写真の中でキャラクターグッズが果たす役割
④その他の要素に照らし正当な範囲内といえるか
⑤著作権者の利益を不当に害することにならないか
本件の具体的検討
まず、社員は風景写真を撮影していたのであり、有名なキャラクターグッズを撮影することが目的ではなく、風景写真にたまたまキャラクターグッズが写り込んだという事情があります。そのため、キャラクターグッズの写真を利用して利益を得ようとする目的はないと思われます(①)。
また、風景写真を撮影した際に、有名なキャラクターグッズが写り込んでしまったというのですから、キャラクターグッズの部分を分離して撮影することは困難であったという事情が伺われます(②)。
そして、風景写真はキャラクターグッズを中心に撮影したものではなく、風景を撮影する際にたまたま写り込んだということですから、風景写真においてキャラクターグッズは付随的な役割を持つに過ぎないと考えられます(③)。
さらに、社員は屋外で風景写真を撮影したと思われ、撮影手段・方法が違法であるという事情は見当たりません。そのため正当な範囲内での利用といえると思います(④)。
最後に、風景写真にキャラクターグッズがたまたま写り込んだに過ぎないことから、これにより著作権者の利益が不当に害されることはありません(⑤)。
まとめ
以上のことから、社員が撮影した風景写真に有名なキャラクターグッズが写り込んだとしても、それは付随対象著作物の利用として許されるといえます(著作権法30条の2第1項)。
そして、そのような写真をウェブサイトで公開することも、著作権者の利益を不当に害するものではないことから、許されることになります(著作権法30条の2第2項)。
※この記事は、2023年11月10日に作成されました。