ベンチャー企業でも商標権は取得すべきでしょうか。
商標権は「名前」を独占するための権利
スマートフォンと言えば「iPhone」、自動車と言えば「TOYOTA」など、様々な製品・サービスについて「パッと思い浮かぶ名前」があると思います。
このように、他社の商品と自社の商品とを区別してもらうための目印となる名前やロゴ等を「商標」と言います。
そして、商標を独占的に使用し、他社に勝手に使用されないようにするための権利が「商標権」です。
商標権を取らないと「タダ乗り」と「混同」が生じる
「勝手に同じ商品名を使用してはならないなんて、当たり前じゃないのか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実は法律上は全く「当たり前」ではありません。商標権を取得してはじめて認められる権利なのです。
あえて少し乱暴な言い方をすれば、商標権を取得していない場合、商品名を他社に勝手に使用されても文句は言えないということです。
他社に商品名を模倣されてしまうと、「タダ乗り(フリーライド)」や「混同」のリスクがあると言われています。
例えば、地道な企業努力の結果、「この商品名の商品なら安心して買える」と思ってもらえるようになったとしましょう。ブランディングとしては大成功と言える状態です。
しかし、商標権を取得していない場合、他社が勝手に類似品に自社と同じ商品名をつけて、大した苦労もなく利益を得ることも可能になってしまいます。これが「タダ乗り(フリーライド)」です。
また、購入者にとって、自社で展開している正規品と、その他の類似品・模倣品との区別ができなくなってしまう事態にもなりかねません。これが「混同」です。
タダ乗りや混同が生じてしまうと、他社に利益を奪われてしまうのはもちろん、模倣品や粗悪品により今まで苦労して培ってきたブランド価値自体が失われる可能性すらあります。こうなると、これまでのブランディングがすべて水の泡になってしまいます。
商標権を取得しておけば、他社が勝手に自社の商品名を使用することを禁止し、万一使用された場合にはその差止や損害賠償を求めることができるようになります。
安心してブランディングを進めていくためには、商標権を取得しておくことは必須と言えます。
商標権は「先に出願した者」勝ち
もしかすると、「商品がヒットしたら商標権を取ればいいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この考え方には大きな落とし穴があることは覚えておいてください。
それは、他社に商標権を取られるリスクです。
日本の商標法では、同じ内容の商標登録出願があった場合、先に出願をした方が優先するという大原則(先願主義)を採用しています。
「先に出願した方」であって「先に使用を開始した方」ではありません。
つまり、もし出願を後回しにしているうちに他社が登録出願を行ってしまった場合、もはや商標権を取ることはできなくなってしまう可能性が高いということです。そればかりか、先に名称を使用していた自社の方が商標権侵害を主張されてしまう可能性すらあります。
登録出願を後回しにすると大きなリスクを背負うことになります。あとあと後悔するくらいなら、早めに出願を済ませておく方がよほど賢明です。
まとめ
商標出願は一見ハードルが高そうに思えるかもしれませんが、実は出願書自体は紙1~2枚程度で、費用も最安であれば3~4万円程度で取得することも可能です。弁護士や弁理士などの専門家に出願手続を依頼しても、5~10万円程度が相場です。
上記のような事態を防ぐためと考えれば、決して無駄な投資ではないと思います。安心してブランディングを進めていくためにも、商標権は可能な限り速やかに取得すべきです。
※この記事は、2024年9月3日に作成されました。