取締役会の議事録を作成していない場合、何か不都合がありますか?
もし、取締役会の決議が必要にもかかわらず取締役会の議事録のない活動がある場合には、取締役会の追認決議をすることをお勧めします。
取締役会の決議事項
会社の活動の中には、取締役会の決議が必要とされるものがあります。そのような活動の例としては、代表取締役の選定や解職、(株主総会から委任を受けた場合の)役員報酬の支給やその額の決定、取締役と会社との利益相反取引の承認、重要な業務執行の決定などが挙げられます。
このように、会社の活動のうち取締役会の決議が必要とされるものを、取締役会の決議事項といいます。
会社の活動が無効とされるリスク
そして、取締役会の決議がないままこれらの活動を行った場合、原則としてこれらの活動自体が無効になってしまいます。そのため、弁護士が携わるトラブルの中でも、取締役会の決議がなく利益相反取引がなされた事案などで、会社(例えば、内部紛争後の新代表取締役)が取締役に対して取締役会の決議がないことを理由に財産の一括返還を求めるケースや、一部の株主(例えば、旧株主の一部相続人など)が遺産分割協議の中で取引の無効を主張するケースなども時折見られるところです。
利益相反取引というと仰々しい印象を受けますが、節税のための役員借入や決算の調整のための代表者貸付などは、多くの会社で行われています。これらも利益相反取引として取締役会の承認が必要になりますが、会社や顧問税理士の方がその点を見落としているケースもあり、身近ながらリスクの大きい問題といえます。
会社の活動が無効とされないケース(例外と追認)
ただし、取締役会の決議を必要とする活動であっても、その決議がなければ全て無効となるわけではありません。そのような活動をした当時の状況を踏まえて、例えば以下のような場合には、有効として扱われることもあります。
・総株主の同意がある場合
・(決議がないことを知らずに取引をした)取引相手を保護する必要がある場合
また、活動をした当時は取締役会の決議を欠く場合であっても、その後取締役会によって追認の決議がなされた場合にも、その会社の活動は当時に遡って有効とされます。
その他のリスク
その他、取締役会の決議事項として必要とされる決議を怠ったことは、取締役の任務懈怠責任(会社法423条1項、429条1項)を問われたり、解任の理由(会社法339条2項)にされたりするリスクがあります。
また、取締役会の決議がなされたにも関わらずその議事録を作成しなければ、取締役が過料の制裁を受けるリスクや(会社法976条7号)、取締役会の開催自体を立証できないリスクもあります。
おわりに
このように、取締役会の決議事項として必要とされる決議を行わないことや議事録を作成しないことは、会社や取締役にとってリスクの大きいことです。そのような場合には、これからでも取締役会の追認決議等で対応することをお勧めします。
※この記事は、2024年2月7日に作成されました。