YouTube配信で著作権侵害しないための注意点を教えてください。
著作物にはどのようなものがあるか
著作権侵害をしないためには、どのようなものが著作物として保護されるのかを知っておくことが重要です。
著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義しています。この定義は、抽象的でイメージしづらいと思いますので、次にあげる著作権法10条1項をご覧ください。
第十条この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二音楽の著作物
三舞踊又は無言劇の著作物
四絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五建築の著作物
六地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七映画の著作物
八写真の著作物
九プログラムの著作物
YouTube動画との関係でよく問題となるのは、イラスト、写真、文章、音楽です。
イラストは、美術の著作物に該当します。素人が描いたものであっても著作物となるので、注意してください。
写真も著作物です。Google検索で見つけたものは自由に使ってよいと考えていらっしゃる方がいますが、著作権者のものですので、自由につかうことはできません。
文章は言語の著作物に該当します。例えば、他人の動画の台本をそのまま利用して全く同じテロップを付けるという場合には著作権侵害に該当する可能性があります。
音楽も著作物です。YouTube動画の多くは、BGMが流れています。勝手に他人が制作した音源を使用することはできませんので、ご注意ください。
著作物には多くの種類があり、その全てをここで説明することはできませんが、「他人が制作した素材を使う場合は著作権法の問題があるのではないか?」という意識を持つことが重要です。
許諾を得る方法と注意点
他人の著作物を利用するには、著作権者から許諾を得るという方法があります。
著作権者からの許諾の取り方ですが、もっともシンプルなやり方は、著作権者に直接連絡を取って、許諾を得ることです。しかし、動画の素材のように、多数の人が利用することを前提としている著作物は、あらかじめウェブサイトに利用条件が明記されていることが多いです。その場合は、利用条件をよく読んで、それを遵守してください。利用条件の中に「商用利用」が可能というものと不可能というものがあります。会社でYouTube動画を配信する場合は商用利用に該当する場合がほとんどですので、「商用利用可」のものを使うようにしてください。
「引用」の要件について
許諾を得ないで他人の著作物を利用できる場合として、著作権法の権利制限規定(著作権法30条以下)に該当する場合があります。特に動画配信で問題になるのが「引用」(著作権法32条1項)です。
「引用」の要件(必要な条件)は、①公表された著作物である、②「公正な慣行」に合致している(例えば、引用を行う必然性がある、引用部分が明確になっている)、③引用の目的上「正当な範囲内」である(例えば、引用部分とそれ以外の部分の関係が、前者が従、後者が主になっていることや、引用される分量が必要最小限度であること)、④出所の明示を行うことです(要件の整理は諸説あります。)。
この要件を守れば適法に著作物を利用できますが、要件が抽象的で、引用に該当するか明確にわからない場面が多いため注意が必要です。
まとめ
以上のとおり、YouTube動画を配信する場合には、まず、他人の著作物を利用していないかに注意してください。他人の著作物を利用する場合には、著作権者の許諾を得るか、あるいは「引用」などの権利制限規定の要件を満たしている必要があります。著作権法の「引用」は要件が抽象的なので、できれば許諾を得る方法を取ることをお勧めいたします。
※この記事は、2024年10月24日に作成されました。