財産分与で株式を渡さなければならないのでしょうか?
まず①について、婚姻中に夫婦の協力によって得た財産であれば財産分与の対象となります。次に②については、株式を半分譲渡するか、株式を金銭で評価し、金銭で株式の半分相当額を支払う、といった対応が考えられます。
離婚時の財産分与とは
夫婦が離婚する場合、一方の配偶者が他方の配偶者に対して、夫婦の協力により得た財産の分与を請求することができます(民法768 条)。これを「財産分与」といいます。婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産(夫婦共有財産)は、原則として2分の1ずつ取得することになります。
今回の相談者が婚姻後に株式を取得した場合(例外について後述)、原則として、保有する会社株式は夫婦共有財産にあたるので、財産分与の対象となります。
株式が財産分与の対象にあたるとすれば、その次に、どのように分与するべきか考えていく必要があります。
財産分与の対象とならない場合
他方、婚姻前に株式を取得していた場合には、原則として「夫婦が協力により得た財産」にあたらず、「特有財産」として財産分与の対象外となります。
また婚姻後に株式を取得する場合でも、「特有財産」として財産分与の対象外となる場合があります。
典型例は、相続によって取得する場合です。たとえば、株式を保有する者が死亡し、その相続によって株式を取得した場合には、当該株式は財産分与の対象外となります。
また、婚姻前に貯蓄した財産から出資する場合も、原資となっているのは特有財産ですから、原則として財産分与の対象外となります。
「特有財産」 に該当するものの、他方配偶者への分与が必要となるケース
今回の相談者は会社の経営者であり、かつその会社の株式を保有しているとのことです。 この場合、配偶者(妻)の経営への寄与によって経営が上向き、その結果として、株式を取得した時よりも株式の評価額が上がるということがあり得ます。
この場合は、株式を取得した時期や理由にかかわらず、株式の評価額の増額分に対して配偶者が寄与した分が、財産分与の対象になることもあります。
分与の方法
株式が財産分与の対象になる場合、分与方法としては、会社株式の2分の1を譲渡するとか、会社株式の評価額の2分の1相当額を支払うといった方法があります。なお、譲渡制限が付された株式を譲渡する場合、会社法所定の手続も必要となります。
経営する会社の株式自体を譲渡すると、会社の支配権に影響を生じさせる恐れがあります。そのため一般論としては、株式自体の譲渡は行わず、評価額相当の金員を支払う方が多いと思われます。
まとめ
株式が財産分与の対象となるのか、またその分与方法をどうするのかは、今後の会社経営を左右する可能性もあります。株式をめぐる財産分与につきお悩みの方、今後離婚を検討している経営者の方は、離婚の話を進める前に弁護士までご相談下さい。
※この記事は、2023年11月24日に作成されました。