周辺住民から騒音・振動・異臭のクレームを受けた際、どう対応したらいいでしょうか?
事業場からの騒音・振動・悪臭の増加
近時、工場のみならず、資材置き場やいわゆるスクラップヤードにおいて、敷地内から騒音・振動・悪臭(場合によっては地下水汚染)が発生することにより周辺住民との間で深刻な紛争となり、また行政から指導等を受ける例が数多く報道されています。
事業場で振動・騒音・悪臭を生じさせる場合の法的なリスク
問題となり得る法規制
振動規制法では、指定地域内において特定施設(機械プレスや圧縮機など)を設置する場合に、事前に届出を行う義務があり、また発生する振動の規制基準を遵守することが求められます。自治体から改善命令が出されることもあり、改善命令に違反すると懲役又は罰金が科される可能性があります。
騒音規制法でも、騒音について同様の規制があります。
また、悪臭防止法では、指定地域内において排出される悪臭についての規制がなされており、特定悪臭物質について規制基準が定られています。改善命令に違反した場合には、懲役又は罰金が科される可能性があります。
さらに、保管する資材が廃棄物であると判断される場合は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法・廃棄物処理法)上の保管規制や不法投棄規制の対象となる可能性がありますので、別途注意が必要です。
なお、国の法令のみならず、事業場が所在する自治体ごとに個別の条例規制が設けられており、国よりも厳しい独自の基準が規定されていることも多いことから、注意が必要です。
民事賠償責任と刑事責任のリスク
このような法令等の規制に直接違反しなかった場合であっても、周辺住民から、受忍限度を超える騒音や振動等により損害を受けたとして民事訴訟が提起され、損害賠償請求がなされる可能性があります。
実際にも、騒音等を理由とする賠償責任が認められた例は数多くあります。たとえば、コンプレッサーによる低周波騒音、金属プレス工場の騒音、エアコン室外機の騒音、製材作業の騒音、立体駐車場の騒音、業務用乾燥機の低周波音等について損害賠償が認められています。また、菓子製造工場の騒音と悪臭を理由として損害賠償責任が認められた例もあります。
また、騒音によって周辺住民に精神的な被害を生じさせた場合には、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)が成立する可能性もあります。傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
対応のポイントとまとめ
以上のとおり、敷地内で発生する騒音・振動・悪臭等が法令違反・条例違反となる可能性があることから、各規制の基準をしっかりと確認した上で、これに違反しないように対応することが必要不可欠となります。
また、騒音・振動・悪臭等が受忍限度を超えるような場合には、周辺住民に対して賠償責任を負うほか、刑事責任を負う可能性もあることから、事業を行うに当たっては、周囲に十分に配慮した上で、周辺住民から指摘がなされた場合には、慎重な判断と誠実な対応が必要となります。
※この記事は、2023年11月9日に作成されました。