取締役が会社財産を着服した際の対応策を教えてください。
事実関係の確認・調査、証拠保全
まずは、物的証拠やデータなどの客観証拠を押さえ、そのうえで、関係者にヒアリングするなどして、事実関係を確認する必要があります。収集した資料・データについては、後日、紛争となった場合に重要な証拠となりますので、紛失しないようきちんと保管しておきましょう。なお、まだ事実関係が明らかになっていない段階での証拠収集については、社内で公にならないよう、少人数で実施した方がよいでしょう。
取締役に対する処分
取締役が自ら辞任に応じてくれればよいですが、そうでない場合、取締役を解任するためには、株主総会を開催して解任を決議することが必要となります。
また、取締役が辞任した場合でも、解任された場合でも、後日にその有効性が争われる場合もありますので、不正の証拠をしっかりと押さえておくことが重要です。
なお、役員報酬については原則として本人の同意がない限りは減額することはできません。ただし、後述する損害賠償請求権との相殺をすることは可能です。
民事責任の追及~損害賠償請求
会社の預金を着服していた取締役には、損害賠償を求めることができます。当該取締役が支払に応じる場合には、示談書を取り交わし、支払に応じない場合には訴訟等の法的措置により回収するか否かを検討することになります。
刑事責任の追及~被害届・告訴状の提出
取締役の刑事責任を追及する場合には、警察に被害届や告訴状を提出することが考えられます。なお、告訴の場合、受理すると警察は捜査しなければならなくなるため、実務的には告訴状を受理する前に、犯罪事実を立証できる証拠が揃っているかなどの確認を求められることが通常です。
関係各所への連絡は必要か
会社の預金の着服は、基本的には社内的な問題であるため、非上場企業の場合、対外的な公表は原則必要ありません。
ただし、例えば保険業など業種によっては監督当局への報告が必要となる場合もあります。
また、取引先との契約上、一定の重要な事項が発生した場合の通知義務が定められている場合もありますので、融資を受けている金融機関や重要な取引先については念のため契約書を確認し、通知が必要となるか否かを検討した方がよいでしょう。
※この記事は、2024年1月25日に作成されました。